|
本当のことなんて言わなくていい。言ったところで変わりはしない。だから言わないでおこう。 どうだってよかったんだ。この生活が壊れようが、崩壊しようが、消滅してしまおうが。その時私は何の痛みも感じずに、死ぬだけなんだと思っていた。後悔さえも、きっと微塵も無いと思っていたんだ。 あぁ、ほら。だって、手のひらを太陽に向けたって、何も見えはしないのよ。ただ影が私を覆う。 「何やってんだ?」 誰にも知られない場所だった。いや、そんなことは無い。学校の中の誰だって入れる場所を、私が勝手に私の場所だと名付けただけだ。そしてそれを逃げ場にして、授業をサボるのだ。 「手のひらを太陽に・・・・」 「なんか見えんのか?」 「何も・・・」 「お前らしい」 トシはいわゆる幼馴染というやつだった。だけど中学に入ってからぐらいから、なんだかそれが私にはどうしてか後ろめたいことになった。だから距離を置こうとした。私から彼に話しかけることは、ほとんど無くなった。 理由なんて簡単で、色々と整った人の幼馴染がこんな地味じゃ、きっと彼にはマイナスの印象になるだろう。そんな理由。だけど本当は、それを知られて彼の友達に自分の悪口を言われることが怖かったからだ。それが本当。 「お前はどうすんだ?」 「何が?」 「進路だよ」 「あぁ・・・悪くてニートで、良くてフリーターじゃないかな」 「お前なぁ・・・」 呆れたように彼は言う。別に関係ないのに。自分になんて、これっぽっちも。 「人の心配なんかしなくていいよ。私は私で、トシはトシ」 「心配するだろ。幼馴染だし」 私に言わせれば、それがどうしたんだって話。そんな理由は理由にならない。だって、意味わからない。ただ幼い頃から一緒にいたからって・・・・・。 「お別れだね」 「何言ってんだ?」 「だって、私たち一緒の進路なわけないじゃない。だから、もうお別れだね。サヨナラ」 「・・・・・ずっと、聞こうと思ってたんだ」 急にしんみりとした空気が彼から流れ始めて、私もそれに流されて、なんだか寂しい気持ちになった。 「お前さ、中学ぐらいから俺のこと避けてるよな?」 「避けてない・・・・・こともない・・・・」 「なんだそれは」 「仕方ない」 「何が?」 あぁ、もう鬱陶しいな。何がって、そんなの言えるわけないじゃない。それを言ったって、納得しないくせに・・・。 「うるさいな!もういいじゃない!!幼馴染だからって何なのよ!もう干渉しないでよ。幼馴染だからって・・・・なんなのよ・・・」 「・・・・?」 涙の理由など無くていい。涙を流さなければいい。なのに・・・・どうして・・・・・。 「泣くなよ。なんでそうやって、1人で背負い込むんだ。言えばいい」 「言いたくない」 「言えよ」 「嫌だ」 本当のことなど言えるわけが無い。言いたくない。本当は好きだ。トシが誰よりも、おそらく何よりも大切で大好きだ。それを隠すのに私は必死になっていた。 本当はずっと前から気づいていたことだった。だからあなたを避ける。自分の気持ちを押し込めるために。ずっとずっと、奥に。 「私・・・・は・・・・・」 言わなくていい。言ってはいけない。言ってはいけないの。私たちの道はきっともう、離れていくの。だからその道を繋げたりはしない。だってトシには彼女がいるから。大切な人がいる。私ではない、誰か。 「十四郎くん」 嗚呼、ほら、やってきたよ。あなたの可愛い彼女。私ではない、誰か。 「あぁ、ミツバ。どうした?」 「姿が・・・・見えないなって、思って・・・・・。・・・・さん?」 「うん。ちょっとこいつと話があるから、ゴメン」 「わかった。じゃあね」 沖田さんは足音をパタパタと立てて去っていった。なぜ、トシはまだここにいることを選んだんだ。 「なぁ、お前は・・・・・・」 「さぁっあ!私は平気だよ。ごめんね、泣いたりして。ウザかったね。うん、大丈夫。ちょっと情緒不安定だっただけ。ほら、追いかけなよ。彼女でしょ?」 笑顔を作ることなど、容易くて、涙を堪えることも、容易くて、私はそうやっていつも、嘘ばかりつく。 「俺・・・・俺、本当は・・・・・お前のこと ―――― 」 私は彼の背中をバシンと叩いた。 「ほら、行きなって」 何も言わずに、彼女を追いかけて。私を見なくてから。彼女だけを見ていればいいから。私は、ただひっそりと、あなたを見ているから。 もしかしたら世界は変わるかもしれない。だけどやっぱり変えてはいけない気がする。世界が崩壊することは、やっぱりなんだか嫌だな。 本音はそっと奥にしまって、また前を向いて歩いていくよ。 その道に、あなたがいなくても。 私はただ、あなたの背中を眺めていよう。 世界が崩壊する、その時まで。 ------------------------------------ 少しばかり暗めの話です。 ごめんなさい。気分が陰のため・・・。 |