世は戦乱。俺は攘夷志士として戦いに明け暮れていた。いくつもの死を作り出し、また作り出され、仲間を失った。最初は悲しんでいたものの、いつの間にか当たり前のように受け入れられるようになった。そのことが悲しく思えた。冷え切った自分の心を元に戻す術はわからず、ただ何かもどかしさを抱えていた。そしてそのもどかしさを誤魔化すように、戦っていた。
俺と高杉は知らない間に仲間とはぐれてしまっていた。


「ここどこだよ。腹減ったしよ」

「銀時うるせー」

「高杉、あそこに民家があるぜ。行ってみよう!」


多分それは偶然で必然だった。俺たちが仲間とはぐれてしまったことも、そこに民家があったことも、あいつがそこにいたことも。


「すみません」

「はい」


高らかな女の声がした。その声の主は漆黒の髪をたなびかせながら俺たちを出迎えた。


「誠に申し訳ないのですが仲間とはぐれてしまいまして、よろしければ数日泊まらせて頂けないでしょうか」


高杉が流暢にそう言った。彼女は少しばかり困った顔をした。


「構わないのですが私しか住んでないので・・・その、ちょっと・・」

「変なことはしません」


高杉が強く言った。


「したら腹切ってやらぁ。なぁ高杉?」

「俺はしないから腹も切らない。心配なのはお前だろう」


クスっと彼女は笑った。


「じゃあどうぞ。狭くて汚いですが」


彼女はそう言ったが、中は広くて綺麗だった。


「いやぁ、女の1人暮らしの部屋は興奮すんな」

「銀時黙れ」

「面白い方ですね」


彼女はまたクスリと笑った。俺はいつの間にか彼女から目が離せなくなっていた。
夜、俺たちは一部屋与えられ、そこで寝ることになった。だけど俺は眠れなくて、部屋を出た。
ふと右側をみると、彼女が月の光に照らされ、縁側に座っているのがみえた。


「何してんだ?」


彼女は俺を見た。あぁ、綺麗な人だ。


「あぁ、銀時さん。いえ、ちょっと月がキレイなので」


隣に座った。


「そういうの好きなのか?」

「父と母が好きで、色々教えてもらいました」

「聞いていいか?」

「両親のことですか?」

「あぁ」


彼女は月を見上げる。


「前に住んでいたところが天人に襲撃されて、その時、殺されてしまいました。ここは別荘みたいなところなんです」


彼女は少し寂しそうな顔をした。


「銀時さんたちは攘夷志士なんでしょ?頑張って下さいね」

「言われなくても頑張ってるさ」


彼女は俺に笑顔を向けた。


「キレイだ」

「本当ですね」


きっと彼女は月のことを言った。だから俺は言った。


「アンタだよ」


俺は立ち上がり、部屋に入っていった。彼女の顔は不思議そうに俺を見ていた。何を俺は言ったんだ。これはなんつー気持ちだ?


「恋」


部屋に入ると高杉が俺を見ていった。


「寝たんじゃねぇのかよ」

「変なことしないって約束だからな、忘れんな」

「同意のもとなら大丈夫だ」

「長居をするつもりは無いぞ」

「わかってる」


俺は何かを隠すように布団に入った。
鯉?いや、故意?俺のあそこの毛、濃い?違う違う。恋・・・ね・・・・・。あぁ、そうか。恋か・・・。
夜は眠れなかった。寝たと思ってもすぐに目が覚めた。それを繰り返しているうちに、朝が来た。高杉はよく眠っていた。
俺は部屋から出て、いいにおいのするほうへ足を進めた。机の上に、綺麗な朝ごはんが3食置かれていた。


「あ、おはようございます。ご飯食べてください」

「あぁ、ありがと」


昨日自覚した気持ちが、俺の中で騒ぎ出す。


「あんたは・・・その・・・・恋人とかいるのか?」


こんなことを聞く自分が、なんだかとても恥ずかしかった。


「いいえ。私のことを好きになってくれる人なんて、いませんよ」

「俺は好きだよ」


言ってしまった。まだ会って間もないのにそんなことをいう俺は、どれほど軽い男だと思われるだろう。


「あぁ、飯だ」


寝ぼけた様子で高杉がやってきた。俺はほっとした。


「銀時、今日にはもう出よう」

「え?」

「ご迷惑おかけしました。こんな立派な飯も食わしてもらって」

「もう行かれるのですか。寂しくなります。滅多に客も来ないですから」

「そうだよ、もうちょっといたっていいじゃねぇか」

「銀時」

咎めるように俺に言う。何も言い返せなくなる。わかってる。俺の都合だということぐらい。
高杉はさっさとご飯を食べてしまい、部屋に戻った。多分あいつなりに気を使ったんだろう。


「銀時さん」

「ん?」

「もうお別れだからあなたに本当のことを言います。私の両親は天人に殺されたんじゃないんです。私が殺したんです」


俺は何も言えなかった。彼女の言葉はまだ続いた。


「天人に親を殺せば助けてやるって言われて・・・。私は嫌だと言った。だけど両親が・・・・お前は生きろって・・・・」


彼女の目から涙がこぼれた。


「お前の名前って、なんだっけ?」


俺はふと気づいた。名前を聞いていなかった。なのに好きだなんて、笑える。




、お前は生きろよ。親がくれた命なんだろ。後ろを振り返ったって、得られるものは何も無いんだ。俺だって色々・・・・悲しいことがある。だけど、生きてるから、俺たちの今日は、昨日死んだ奴が生きたいと思った明日だから、だから生きるんだよ」


彼女は小さい声でなんども「ありがとう」とつぶやいた。そして少し大きな声で言った。


「銀時さん、いつかまた、ここに来てください」

「あぁ、約束する」


俺は泣いて小刻みに震えるを抱きしめた。血の通う人間は温かかった。
彼女は俺たちを手を振って見送った。






それからいくらかの時間を経て、俺は彼女に会いに行った。けれどあの場所にあったあの家は、黒い煤に覆われていた。嫌な予感がして、俺は走ってその中に入っていった。
嫌なにおいがした。焼けた着物があり、その横に何かがあった。

後悔をした。

あのときこいつを一緒に連れて行けばよかった。それか俺がここにいればよかった。独りにするんじゃなかった。
あぁ、良かった。俺はちゃんと泣ける。あの戦いの中で冷え切った心は、まだ冷え切っていなかった。良かった。だけど、こんなに悲しいのは、やっぱり辛い。
家を出た。俺の前には高杉が立っていた。


「知ってたのか?」


俺は高杉に問う。


「何をだ」

「死んだこと。あれは事故か?事件か?それとも・・・・自殺・・・か?」

「手紙が来てたんだ」


高杉は俺に手紙を差し出した。俺はそれを奪い取り、中身を呼んだ。



『この手紙があなたに届くかわからないけど、私は届くことを祈ってこれを書きます。
あなたに出会って、そして別れてから、私は貴方のことばかり考えてしまいます。あの時に言ってくださった言葉が、嬉しくて嬉しくて、だけどそれを伝えることができないまま別れたことがとても悔しいです。
あなたは生きろと言ってくれました。けれど、ごめんなさい。やっぱり両親を殺して自分が生きるということは、私には辛すぎます。だから、ごめんなさい。もう一度、貴方に会いたかった。会って私の口で、声で、言いたかった。あなたが好きだと。
ねぇ、銀時さん。あなたは生きてください。どうか私を、あなたの中で生き続けさせてください。こんな弱い私を好きになってくれてありがとう。わがままな女でごめんなさい』



涙が止まらない。今まで溜めていた涙が一気に出てくるように、とめどなく涙が出た。
俺はこんなにも泣けるのか。良かった。、お前が気づかせてくれたよ。

・・・・。この手で君を抱きたかった。



この想い、いつまでも君に捧げます















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   もう少し長い予定でしたがごっつ
   省略しました。急な展開ですいません。
   一部他人の名言拝借。20070805

背景で読みにくかったら言ってください。