なんだコレ。最低最悪の現実だ。





















この先に希望があるならば




















私の家の食卓。私の前に母親と男が座っている。


「お母さんね、この人再婚しようと思ってるの」


母親が嬉しそうにそう言った。
母親が離婚したのは私が幼稚園の頃。私は父も好きだった。けれど親は違っていたらしい。別に私は父親がいないからといって不幸だと思ったことはない。母親の好きな相手なら誰でも受け入れる準備はしていた。
隣に座っている男に目をやる。土方十四郎、私の好きな人。


「私、反対だから」


母さんごめん。許せることと許せないことがあるの。私はそれだけ言って家の外に出た。
ふざけるな。どれほど私が土方十四郎のことを好きなのか、わからないだろう。そもそも私が痴漢に遭った時に助けてくれたのが土方十四郎で、私が最初に出会ったんだ。
何?私が愛のキューピット?ふざけるな。


「おい」


なんで追いかけてくるかな・・・。


「何?母さんとヤってれば?」


ため息をついて、下を向いて、自分の頭をくしゃくしゃとする男。
あぁ、カッコいい。


「お前なぁ・・・」

「何?」

「別になんでもねぇけど・・・。お前なんで反対するんだ」

「アンタ以外なら賛成するわよ」


そう、その準備は出来ていた。アンタだから悪いんだ。


「俺、そんな嫌われてんのか?」


男は鈍い。こいつは特に鈍い気がする。


「・・・・死ねば?」

「は?・・・って、おまっ・・・え・・・」


私は走って逃げた。最悪最低。最低最悪。あいつの目に私はいない。ままごとみたいな愛はいらない。欲しいのはそれじゃない。
あいつはどうせ私を餓鬼としてしかみてない。高校生だぞ。子供じゃない。年上好みか。変態め。
痴漢に遭って、助けられて、ときめいた。何度も屯所を覗きに行った。見つけては幸せになれた。パトロール中に出会ったら声をかけてくれた。
そんな間に母親と愛を育んでいたのか。独りよがりの幸せだったのか。


じゃねぇですかィ」


あいつから逃げ出して公園のベンチに座ってボーっとしていた時だった。


「あぁ、おっきー」


おっきーと仲良くなったのは屯所を覗いていた時にヒマならトランプをやろうと誘われ、それから仲良くなった。
おっきーは隣に座った。


「何してんですかィ?土方さんが今日言いに行くって言ってやしたけど」


こいつ知ってたのかよ。母親と土方十四郎が付き合ってるの。私は知らなかったってのに。なんで言わなかったんだよ。私が土方十四郎を好きなこと知ってるくせに。


「来たよ。反対してやった」


ふっとおっきーが笑う。


「切ないねェ」

「人の不幸は楽しいでしょうね」

「ひねくれてらァ」

「おっきーが私を痴漢から助けてくれたよかったのに」

「アンタなんかに好かれたくありやせん」

「・・・・ドS」


おっきーは誇らしげに笑った。
本当に思うんだ。どうして土方十四郎を好きになったんだろうって。私が好きになってたかったら、私は母親の再婚を喜べた。土方十四郎がカッコいいのか・・・・。それを認めるのは、なんだか不甲斐ない・・・。





愛しい人が私の名前を呼ぶ。


「なっ・・・・土方十四郎?なんで?」


どうして短時間で見つかってしまうんだ。


「じゃあお邪魔だろうから帰りまさァ」

「どうもな、総悟」


まさか・・・。


「気にしないで下せェ」


私はおっきーをみた。ニヤリと笑った。こいつ、やっぱりドSだ。
隣に土方十四郎が座った。
座るなよ・・・。


「あ、用事があったんだ。じゃあ―――


立ち上がって歩き出そうとしたのに、土方十四郎が私の腕を掴んでる。
馬鹿野郎。


「座れ」


大人しく座る私もどうかと思う。


「悲しんでたぞ」

「あんたの恋人でしょ。慰めてあげれば?」

「お前の母親だろ」

「母親だから何?なんでも許せって?冗談じゃないわよ。私の好きな人と結婚するっていうのを、はいそうですかって笑って許せるわけないでしょ。そんな生半可な気持ちで人を好きになってないわよ」


下を向いて、一気に言った。もう土方十四郎の顔を見れない。


「お前、おかしなこと言ってるぞ」

「言ってない。不本意よ。親が結婚して苗字が好きな人のに変わるなんて。本来なら私が土方十四郎と結婚して――――

「ウソって言え」


私の言葉を遮った。
チラッと横目で土方十四郎をみる。困ったように頭を抱えてる。
もうダメだ。


「おまっ・・・ちょっ・・・」


走った。逃げた。辛くて耐えられない。どうして困った顔をするんだ。困らせたいわけじゃない。ただ素直に気持ちを言っただけだ。どうして私がこんな思いをしなければならないんだ。
腕をまた掴まれた。土方十四郎の手は嫌いだ。軽く私の手首を掴む、その大きな手が愛しいんだ。


「逃げるな」

「じゃあどうしたらいいのよ!!私・・・わかんないよ・・・・。もう・・・・」


泣くな。泣いたらダメだ。それはズルイ。


・・・」


なぜそうも簡単に私の名前を呼ぶんだ。


「離して」


私の腕から土方十四郎の手が離れる。
私は振り返って、両手で土方十四郎の胸ぐらを掴んで、グイッと彼の顔を自分に寄せた。
無理やり唇を奪った。


「ざまあみろだわ」


私は唖然とする土方十四郎をほって、また走って逃げた。
もう終わりだ。すべてが終わりだ。あんなことをして、どんな顔をして会う。まさかの家族候補に・・・。


「おーい」


走ってる途中に声をかけられた。こいつのせいでもあるんだ。私は止まってそいつに言った。


「アンタが土方十四郎を呼ぶからもう最悪の事態・・に・・・・・・」


こいつに言っても仕方ない。悲しくなるだけだ。


「どうするんですかィ?土方さん来てますぜ」


追いかけてくるのが見える。


「あの人馬鹿?」

「馬鹿ですぜ」

「私本当に相手にされてないんだね。キスしてやったのに追いかけてくるなんて、何も感じなかったんだ。結局私に向けられてるのは家族愛なんだよ」


涙がこぼれ落ちた。こんなにも、こんなにも好きなのに、報われない。欲しいものはすぐそこにあるのに、手に入らない。


「家族愛が愛情に変わらないか、自分の目で確かめたらどうですかィ?」

「・・・どういう意味よ」

「ひとつ屋根の下で暮らしてりゃ、向こうもムラムラしてくるかもしれませんぜ」

「賭ける?」

「いいですぜ。俺の命賭けまさァ」

「・・・・そんなデカいモン賭けていいの?」


おっきーは自信ありげに笑った。


「おらァ土方さんとどれぐらい長くいると思ってるんでィ?」

「じゃあいいよ。私頑張らないといけないね。おっきーも土方十四郎も失うことになっちゃうから」

「言っときますけど、おらァそう簡単には死にませんぜ」

「だろうね」


涙は消えて、私は笑えた。
おっきー、ありがとう。私は前に進んでみるよ。やっぱりそう簡単には捨てれないよ。命も大切だしね。


!!・・・って総悟まだいたのか」

「お宅の娘さんに指導してただけでさァ」

「おっきー、娘じゃないから。ちょっと、土方十四郎」

「お前、そのフルネームで呼ぶの止めろ」

「私諦めないから、あんたのこと」


土方十四郎はおっきーを睨んだ。


「お前、どんな指導した」

「素敵なアドバイス」

とぼけたように答える。

それから2人はゴチャゴチャと口喧嘩をしていた。



叶うかわからないけど、諦めたらそれはそこで叶わなくなる。だから私は諦めないよ。
みてろ、土方十四郎。お前を欲情させてやる。











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   強気な子と名前をフルネームで呼ぶ子と
   「ざまあみろだわ」が書きたかった。
   20070806