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理由を100文字以内に述べろと言われたら、多分足りないと答える。 理由をともかく書けと言われたら、多分書けないと答える。 理由は理屈じゃないんだ。私だってわかんないんだから。 「クサっ!!」 小学校入学初日に隣の男子に言われた言葉がそれだった。 「お前なんでそんな臭いんでェ?ちゃんと風呂入ってるんですかィ?」 返す言葉も見当たらなくて、私は唖然として彼をみていた。ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべたその顔を、私は忘れられない。 * 「クサっ」 まだ言うか、沖田総悟。高校生にもなって、懲りないのか。 「お前体臭おかしいんじゃねェですかィ?」 「うるっさい!!なら私の近くに来なければいいじゃない!!いちいち側に来て臭い臭いって」 「おー怖い」 私が怒ってもあいつはただ笑うだけ。私を下にみて楽しんでるんだ。私も無視すればいいものをいちいち反応する。反応してしまう。なんでかなんか、わかんない。 「」 どうしてかいつも聞きたいと思っている。だけど聞けない。私を名前で呼ぶ理由。 「何?」 怒ったように答えるのは何かを隠そうとしているから。 「クサい」 「いい加減にしてよ!!本当にムカつく!!アンタなんか大っ嫌い!!」 私はまた、総悟は笑って「おー怖い」とか言うんだと思っていた。なのに怖い顔をして、何も言わずに私から離れていった。 「そ・・・総・・・・悟・・・?」 私の声は彼には届かなかった。それに元々、実に小さい声だった。 彼を名前で呼ぶのは、向こうが私を名前で呼ぶからだった。負けず嫌いと人は言った。 さっきのことが気になって、授業中に総悟をみた。どこか遠くを見てばかりいて、心ここに有らずという言葉が似合う感じだ。総悟は何を思って、何を考えているんだろう。どうして笑ってくれなかったんだろう。どうしてこんなに、気にしてるんだろう。 休み時間のことだった。 「」 ビクリとした。総悟が私をそう呼んだ。 「な・・・何?」 怖い。怖い顔。 「二度と総悟って呼ぶな」 それだけ言ってまた私から離れていった。寂しさに似た何かが体を巡る。 何?私なんか酷いコト言った?アンタが私に言ったことはなんなの?酷くないの? なんなの?ねぇ、総悟。なんでって呼んだの? 私はあんたのなんなのよ。あんたは私のなんなのよ。 なんだかよくわからなかった。総悟は二度と私に「クサい」と言わなかった。そしてまた、とも呼ばなかった。そんなことよりも、あれ以来しゃべっていなかった。 あれからもう14日が経った。なぜかきっちりわかる私。知らない間に数えていた。 空腹に似た何かが私の中にある。それを取り除くのに必要なモノはわかっている。だけど私は恐れている。またそれが増えること。自分が傷つくこと。 そんな考えを巡らせながら帰っていたら、ゴンっという音がした。カバンが何かに当たったらしい。みてみれば人ではないか。しゃがんでいた頭に当たったらしい。 「あ、ごめんなさい」 「ったァ〜」 最悪と最高が一度にくることは人生においても極わずかだろう。 その人が顔をあげる。私をみて、顔が変わった。 「なんだ、じゃねェですかィ」 やっぱりそう呼ぶのか。 「ボーっと歩いてんじゃねェ」 「うるさい。そんなとこでしゃがんでる総・・・・沖田くん・・・が悪い」 「キモっ」 「何がよ」 「お前が沖田くんって呼ぶのがでさァ」 「なっ・・・あんっ・・・あんたが呼ぶなって」 総悟はクスクスと笑っている。何を笑ってんのよ。なんで私、こんなホッとしてんのよ。なんでこんな嬉しいのよ。 「寂しかったんですかィ?」 「なんでよ」 「泣きそうな顔してたじゃねェですかィ」 「してない」 「そうですかィ。じゃあこれからも最近のような感じで」 「そうしたら寂しいのは沖田くんじゃないの?」 嫌味で私は言ってやった。どうせ「そんなことあるわけない」みたいな答えが返ってくるのはわかっていた。 「そうかもしれねェ」 え?なんてった? 「帰らねェんですかィ?」 少し歩いて立ち止まって、振り返って、私に言う。 「一緒に?」 また総悟はふっと笑う。 「クサいしキモいし・・・」 「何がよ」 「お前がでさァ、」 あ、今って言った。ヤバイ。嬉しくて笑ってしまう。 「笑ってらァ。気持ち悪・・・・」 総悟はさっさと歩いて行ってしまった。 「あ、待ってよ!」 私は総悟を追いかけた。総悟は走って逃げていく。 私たちは多分互いに鈍感で不器用なんだろう。これからどうなるかはわからないけど、少し前に進めた気がするよ。 |
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------------------------------------ 不器用な人が好きなのです。 20070811 |