君と出会ったその日は、雨が降っていた。




















予報外れの雨










「ちょっと銀さん、僕のプリンは何処にいったんですか?」


夏の暑い日。少し怒った声で新八が俺に聞いてきた。


「え?あぁ・・あれ。俺の腹の中。いやぁ参ったよ。食べてくれェって叫ばれてさ、お前は新八のだからダメなんだって言ったんだよ?だけどしつこくてさ」

「・・・・・わかってますよね?」


暑い時に怒られるのはイライラするので、素直に従うことにしましょう。あぁ、俺って大人だな。


「はいはい、買いに行けばいいんでしょうが」

「酢昆布もアル」

「お前らなァ・・・自分らで行けよ!暑いのに俺をコキ使うのか!!若いだろ、お前らは。まだまだ若いんだろ!頑張れよ、若者!!」

「プリン食べたの銀さんじゃないですか」


心が痛い。何かが刺さる。痛い・・・。


「行きますとも・・・・行けばいんだろうがァァァ!!」


一歩外に出れば、セミの声が聞こえた。聞こえるはずもない、太陽が照らすジリジリという音が聞こえてくるようなきがした。
単車に乗ってコンビニへ。コンビニの効きすぎたクーラーが汗を冷やし、涼しさを通り越して寒さを少しばかり感じるぐらいだ。
プリンと酢昆布を買って帰ろうとした時、雨が降り出した。


「あぁ、予報外れたな。おい、バイト。傘出せ」


店のおっさんがバイトに命令していた。バイトは奥に入り、何本か傘を抱えて出てきた。それを俺がじっと見ていたからかもしれない。


「買いますか?少し値引きしますよ」


「え?」


なぜこういうときに強気になれない。なぜ素直に傘を買ってしまう。金が・・・無いのに・・・・。いや、だけど値引きしてくれたんだろ?つまりお買い得だったわけだ。うん、いい買い物をしたんじゃない?
単車で帰るのは諦めた。せっかく買った傘を使おうと歩いて帰ることにした。
むんとした空気が体にまとわりつく。熱せられたコンクリートが雨で冷やされたために出てきた熱気だ。気持ちの悪い暑さだ。
そんな中を歩いている人間はほとんどいなかった。俺も本来ならば買い物などに行く必要は無かった。プリンが悪いんだから。俺に食べろっていうから・・・・。
突然だった。ガサガサっという音が、横の茂みからして、ギャッ!という声が聞こえた。俺は興味本位でそこを覗いた。
下着らしいキャミソールを着て、傘もささずに泥にまみれながら、何かをしている女がいた。


「何してんだ?」


思わず声をかけたのは、ちょっとした下心があったことを否定は出来ない。そのキャミソール姿を正面から見たかった。そういう下心。


「猫が・・・死んじゃってて・・・・可哀想だから・・・埋めてるんです」


彼女は少しばかり寒そうにしていた。その格好で雨に打たれれば、確かにこの蒸し暑さでも寒さを感じるかもしれない。
俺は茂みの中に入り、立ったまま、しゃがんでいる彼女に傘をかぶせた。


「あ、あの、いいです。大丈夫です」

「早くやれよ」

「・・・・すみません」


なぜ彼女が上着を着ていなかった理由はすぐにわかった。死んでしまった猫を掴むのに、それを使っていたからだった。どろどろになった上着。爪の中に入り込んだ泥。そんなことを彼女は気にもせず、その猫をそっと埋めていた。
彼女は猫を埋め終わると、立ち上がって俺を見た。


「すみません、ありがとうございました」

「どうすんだ?」

「え?」

「んな格好してどうすんだって聞いてんだよ。その上着、ドロドロで着れねぇだろ」

「あぁ・・・大丈夫です」

「大丈夫なわけあるかっ!世の中には変態という名の肩書きを持った男という生命体がうようよいるんだ。んな格好で歩いてたら襲われるぞ」


彼女はクスクスと笑い出した。


「なんだよ。何がおかしい」

「だって、あなたも男だから・・・」


俺は自分の上着を彼女にかけた。


「俺ん家近いから、来い」

「あの、いいです。大丈――――

「大丈夫じゃないから」


俺は彼女の腕を掴んで、無理やり引っ張って家へと導いた。俺をよりも小さい彼女は、俺の上着を地面に擦りながら歩いていた。それを気にしたのか、手で上着を持ち、地面に付かないようにしていた。


「ただいま」

「あ、おかりなさい・・・・って銀さん、誰ですか?」

「・・・誰でしょう?」

と申します」

「依頼者ですか?」

「違うけど、ちょっとシャワー貸してやれ。んで神楽。ちょっと服貸せ」

「何する気ですか、銀さん。そういうプレイを楽しむ――――


新八を殴った。何を言い出すんだコイツは。


「悪いな。変なやつばっかで。シャワーあっちにあっから」

「あの・・・すみません」

「万事屋だから気にすんな」


はにこりと笑い、そして丁寧にお辞儀をした。何か、愛おしさを感じた。



それから3日間、は俺の家に居座った。お礼にといって、家事全般を丁寧にやってのけた。飯は上手かったし、掃除は丁寧で店は見違えるほど綺麗になった。
確かに俺は、に惚れていった。

4日目の朝、は突然いなくなった。手紙を一つ置いて。


『お世話になりました。そろそろおいとまさせていただきます。長居して申し訳ありませんでした』


「おい、お前ら、なんだコレは」

「え?あぁ、銀さん。起きたんですか。さんからの手紙ですよ」

「そうじゃなくて、出て行ったのかって聞いてんだよ!」

「銀ちゃんあほアルカ。そう書いてあるじゃねぇか」

「なんでお前らそんな普通なんだよ」

「普通も何も、仕方のないことじゃないですか。ずっと此処に居座られたって、給料払えないでしょ?ずっとただ働きなんてさせる気だったんですか?」


なんで突然いなくなるんだ。せめてきっちりとしたサヨナラの儀式をしろ。手紙なんてズルいだろ。ちゃんと、面と向かって・・・・。


「ちょっと行ってくる」

「え?」


俺は外に出た。暑いとか、そんなことは気にならなかった。そんなことよりも、アイツはどこに行った。
街をさ迷った。途中真選組に会った。の特徴を言って、探してくれと頼んだ。快く引き受けなかった。つまりは断られた。さすがチンピラ警察。税金泥棒。
仕方なくまた独りで探し始めた。空が表情を変え始めた。


「あ?雨降らねぇんじゃねぇのかよ」


途中ラムネを買って一気飲みした。それからしばらく歩いた時、めまいがした。噂の熱中症というやつだろうか。フラフラとしてきて、俺はその場に座りこんだ。
ポツリと雨が一滴、俺の顔をぬらした。それからポツリポツリと雨が強くなってきた。
立ち上がる元気もなく、俺はただ雨に打たれ続けていた。地面をただ見つめていた。その顔を上げたのは、ふと、雨がやんだからだった。


「どうしたんですか?」


消えそうな意識の中で、俺はその声の主を見た。俺に傘を重ねて、俺から雨をさえぎっている。あぁ、だ。がいる。


「お前が・・・勝手に出て行くからだ」

「ごめんなさい」


俺は傘を差し出しているその手を掴み、グイッと引っ張った。の手から傘が離れ、その傘は地面に転がった。
俺はを抱きしめた。


「勝手に出て行くな。俺はお前がいないとダメになった。お前がいないと・・・なんだかダメなんだ」

「私も、銀さんにサヨナラを言いたくなかったの。サヨナラしたくなかったから。好き・・・銀さん」

「俺もだ」


予報外れの雨に日に感謝しよう。君に出会えたのは、君と一つ屋根の下で暮らせたのは、そのおかげだから。










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   相変わらずの乱文&無理やりな展開。
   ごめんなさい。20070815