|
降りた駅に行き、残りの十円で桂に駅名を告げた。そうすることにしたのは桂の提案だった。最初からこうしておけば良かった。 いや、あの親切なおじさんに色々聞けば良かったし、電話も借りれば良かった。 まぁ、なんとかなるからいいか。 電車が駅に止まり、改札口から桂がやってきた。 「人騒がせが」 怖い顔をして俺に言った。 「悪いな」 「悪すぎる。いくらかかったと思ってるんだ?めちゃくちゃ遠いじゃないか。片道1000円近いぞ」 「俺からのクリスマスプレゼント」 「ったく・・・。切符買ってくる」 そう言って桂は切符を買い、一枚を俺にくれた。 電車に乗り、揺られる。窓の外ではクリスマスのイルミネーションが輝いていた。 俺の生まれ育った町じゃない。こんなにも明るくは無い。 「お前、はどうした?クリスマスだぞ?」 「別にいいだろ」 俺はなんとなくそれ以上を聞こうと思わなかった。 しばらく俺たちは黙ったままで、いつもとは違う混んだ電車の窓から景色を見ていた。 「降りるぞ」 ある駅で桂がそう言い、俺は後について行った。見覚えのある景色が広がった。 「おぉ!!懐かしい景色に懐かしい匂い」 「馬鹿」 「失礼な」 「お前、どっかに頭ぶつけたのか?なんか変だぞ」 「別に・・・どうもしてねぇよ」 見覚えのある景色。行く道はわかってる。俺は足を進めた。 「・・・・電車、ねぇじゃん」 「当たり前だろ。今何時だと思ってんだ。あの路線の最終電車は9時。今はもう10時」 俺たちは仕方なく歩くことにした。そこそこに距離があるけど、俺たちはまぁいいやと思って歩くことにした。 「今日中につく?」 「多分つくだろ。とんだクリスマスだ」 「ならと一緒に過ごしてりゃ良かったじゃねぇか」 「あいつ、風邪引いたんだよ」 最初から言ってろよ。別に隠すような事でもないのに・・・。 「桂」 「なんだ?」 「お前って童貞?」 何も無いのに桂はつまづいてコケた。 「大丈夫か?」 コケた桂に手を差し延べた。 「だ・・・大丈夫・・・・。お前、突然変なこと聞くなよ」 戸惑う桂がおかしかった。だけど俺は笑わなかった。 「で、童貞?」 「そ・・・・そうだよ」 嫌そうに桂が答えた。 「予定は?」 「は?」 「ヤる予定」 桂は深呼吸をした。そして厳しい目をして俺を見た。 「銀時、そんなこと聞くな。それに聞かれても答えない。止めろよ、そういうの。気分悪い」 「あぁ、そうか。悪かったな」 まるで謝る気など無いのが分かる言い方をした。 それから俺たちは何も話さなかった。桂の家の前で一応「ありがと。また今度金返すわ」と言った。 桂の家より遠い俺の家。田舎で良かったと思うのは、鍵を閉めるという習慣がないこと。 暗い家に入る。クリスマスなんて祝わない。 変わることは不自然じゃない。変わらないことなどこの世にはない。 俺自身も変わりはじめていた。 ------------------------------------ 景色は変わり、そして消えてく。 |