昨日のの行動と「ごめん」の意味を考えてみたものの、なんら答えらしい答えは出てこなかった。


教室は活気づいていた。
修学旅行のどうのこうのを決めているらしかった。俺はただ時間が過ぎるのを待っているだけだった。



「銀時、俺と同じ班でいいか?」



桂が俺に聞く。



「別にどこでもいいけど・・・」



予想される出来事を考えてみると、結局奴らは二人きりになって、俺は独りぼっちにでもなるんだろう。高杉と、またなんかやろうか・・・・。そういえば、今日は高杉が来てない。あいつらと一緒に帰るのはまだ気が引ける。
なんで、気が引けるんだ・・・?

高杉が学校に来ることは二度と無かった。親の都合で海外へ行ったらしい。ある日ポストに手紙が入っていた。お前と会えてよかっただの、また会おうだの、そんなことばかり書いていた。あの高杉が女々しく思えた。けれど俺も返事を書いた。お前がいて良かっただの、また会いたいだの、そんなことばかり書いた。
互いの汚れを知っているから、心を許せる。というより、結局汚れが自分のすべてに思えて、それを知っているから取っ付きやすいんだろう。
だって俺は、汚れを桂やに知られたくないと思ったし、奴らの汚れも知らなかった。


そうこうしているうちに、修学旅行がやってきた。実に気の重いこと・・・・。



「自由行動どうすんだ。一応班行動だろ?」



バスの隣の座席に座っている桂に聞いた。



「みんなそれぞれ、本当に自由だってさ。何時に何処集合かだけ決めて、集合時間前にそこに集合すればいいって」

「お前はとか・・・」

「お前も一緒だ」



思わぬ言葉が降り注ぐ。



「・・・・お前、それ、俺に気ぃ使ってるつもりかもしれねぇけど、逆に俺嫌だから。すげぇヤダ」

「別に何も気にすること無いだろ。3人のほうが楽しいだろうし。少しぐらいいいだろ。も・・・なんか・・・色々言ってた・・・・」



最後の方は少し声が重くなっていた。



「・・・・何を?」

「銀時は・・・俺たちに変に気を使ってるかなって。そんなことなら、付き合わないほうが良かったのかな。とか・・・なんとか・・・。まぁ、そんなことだ」

「お前のせいだろうが。に変に気負いさせるなよ」



桂は何も言い返してこなかった。
しばらく経ったとき、窓の外を眺めながら桂が言った。



「なぁ、銀時。俺、時々思うんだ」

「はひほ?」



貰ったお菓子を口に含んでいた俺は、ちゃんと喋ることが出来なかった。



「お前ってさ・・・・・」

「・・・・はんはほ」

「お前って・・・・のこと、好きなんじゃないかって」



口に含まれていたお菓子はバスの床やら椅子やらに飛び散った。



「お前っ!!汚いな・・・。なんで吐き出すんだよ」

「あ・・・アホか!!お前が変なこと言うからだろうが!!てか、なんだよその思考。どっから出てきた。お兄さん驚いちゃって吐いちゃったんだよ。お前のせいだよ」

「そう思えば、全部辻褄が合う」

「・・・・ばっかじゃねぇの」

「なっ・・んだよ」

「お前に俺の気持ちがわかるわけねぇだろ。勘違いもほどほどにしとけよ。別に好きじゃねぇよ。好きな奴には好きだって・・・・ちゃんと言うさ」



言えなかったくせに、偉そうにウソをつく。だけどお前には、コレがウソだなんてわからないだろう、桂。だからウソをつくんだ。お前の安心のため。俺の明日のため。
そうやって一つ一つ、俺はきっちり理由付けしていくよ。でなきゃ、笑ってなんて、いられないんだ。

自由行動の時間がやってきた。班行動しなければならないけれど、大体の班は先生から見えなくなったところで、みんな自由に動き出した。そしてまた、先生の見えないところで集合し、班行動してましたよ。なんていう、何食わぬ顔をして帰っていくのだ。
俺の班も例外ではなかった。



「じゃあ、また後でな。遅れんなよ」



班長の誰だったかが言って、みんな何処かへ行った。ついでに俺もどこかへ行こうとした。



「コラ、どこ行くんだ」



桂の重い声がする。



「あのさぁ、だから嫌だって言ってんべ?強要って良くないと思うっちゃ。な?」

「・・・・お前、なんか垢抜けたな。前までそんな「べ」だとか「っちゃ」なんて可笑しなこと言ってなかった」

「なんだよ、ダメなのかよ」

「そういう意味じゃなくて・・・・知らない間に人は変わっていくんだなって思っただけだ。想像を超えていく」

「訳わかんねぇこと言ってんじゃねぇよ。じゃあな」

「だから、こっちだって」



逃げても無駄だと思い、素直についていくことにした。変に嫌がるのも、また桂に俺がを好きなんじゃないかって思わせるのに、十分な理由になりそうな気がした。



「久しぶりに3人だね!」



嬉しそうには笑った。俺は笑わなかった。



「ほぉら、もっと楽しそうにしなよ!」



バシンと俺の背中をが叩いた。



「イテっ!お前、何すんだよ」

「ほぉら、笑え笑え。今のうちに笑っとかないと、もうすぐ受験だぞぉ」

「来年だろ。俺関係ないし」

「銀時、何も決めてないの?ヤバイんじゃないの?・・・小太郎は就職か。それも大変だよね」



桂が言った言葉が脳裏を掠める。

『知らない間に人は変わっていくんだなって思っただけ。想像を超えていく』

はあんなんだったかな。垢抜けた。そんな言葉が思わず出てくる。俺も誰かに言われたな。そういうことか・・・・。



「あ、ねぇ、ここ綺麗。写真撮ってもらおう」



そういうとは道行く人にカメラを渡した。俺は二人から離れた。



「銀時も入るんだよ」



ぐいっと腕を掴まれ、無理やり枠内に収められる。



「笑えよ」



俺の横で桂が笑いながら言う。

笑えるかよ。

そう思った瞬間、フラッシュが光った。



それが三人で写っている唯一の写真だった。
修学旅行が終わってしばらくすると、焼き増ししてはその写真をわざわざ俺と桂にくれた。
俺はいつの間にかそれを無くしてしまった。
そのことに気づいたのは、会社をクビになって転がりこんだ桂の家で、きちんとフォトフレームに入れられて飾られた、その写真を見たからだった。







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   切なさのすべてをかけて僕は信じる。
   ハートは届くと。