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「あっれ?銀時じゃん。久しぶり」 朝からは驚くほど元気で、声が頭に響いた。 「また一緒に行けるんだ。良かったぁ」 やたら嬉しそうに笑うから、俺の心は締め付けられる。俺は間違ってばかりのようだ。 「それよか・・・・二人とも、顔が・・・ね・・・・なんか・・・・・」 「あぁ、コレはちょっと。男の友情ってやつ」 桂は笑ってそういって、俺を見た。 「そうそう。ちょっと乙女にはわかりにくい、男だけの世界」 三人で電車に乗る。なんだか懐かしい場所に帰ってきたかのようで、心が安らいだ。だけど、もう前の俺ではないのだから、あの場所には帰れないんだろう。それに、この場所を一度捨てたのも俺自身なんだ。後悔をただひたすらにしてばかりいて、それで俺は何を得ているんだろう。 人という生き物は不思議だ。気持ちによって景色が違って見える。あんなにクソに見えた学校が、なんだか少し綺麗に見えた。俺の心の中にあった、何か黒いモノが少し薄らいだんだろう。 「私さ、これからずっと予備校行くんだ。だから一緒に帰れないの」 休み時間にが言った。朝から何かを言いたそうにしていたのは、このことを言いたかったのか。 「仕方ねぇんじゃねぇの。別に一緒にいなくたっていいだろ。お前にはお前の将来があんだから、それ大切にしろよ」 「うわっ、なんも考えてない銀時に言われたくない言葉ばっかりなんですけど」 「はいはい」 「小太郎、なんか言ってやってよ」 「頑張ろうな」 その桂の言葉は、なんだか妙に重くて、俺は思わず下を向いてしまった。 すれ違ってるわけじゃない。ただ未来へ進もうとしているだけ。その道が違うだけ。だから距離を感じてしまうだけ。 昔のようなその場面には、昔には無かった気持ちがあった。同じ景色は二度と見れないのか。 「銀時、帰るぞ」 放課後、桂の声が俺を呼ぶ。 「あぁ・・・ごめん。俺・・・その・・・・」 「また、行くのか?」 桂を失望させたくはなかった。俺を心配してくれていることもわかっていた。だけど、だけど・・・・・。 「ごめん。金がいるんだ」 「バイトじゃダメなのか」 「だから言っただろ。こんな奴と一緒じゃないほうがいいって」 「それは俺が決めることだ。別に、俺はもう何も言わない。勝手にしろよ。ただ、東京には一緒に行こう」 「あぁ、ありがとう」 桂は俺の汚れを認めてくれたのかはわからない。ただ認識はしてくれたんだろう。その違いは、小さくて大きくて、俺にはどうしようもない。桂だけ。その気持ちを変えられることが出来るのは。俺に出来ることなど何もない。 光陰矢のごとく。季節は巡り巡った。桜が咲き、紫陽花が咲き、ひまわりが咲き、もみじが赤に染まり、木々は枯れ、雪化粧をした。 卒業式前の最後の登校日、桂は風邪で休みだった。は予備校が休みで一緒に帰ることになった。 「受かりそうなのか?」 「・・・そういうこと聞くの?」 「心配してんだよ」 「一応判定は良いけど、あんなもん信用できないよ。友達の知り合いがA判定でも落ちたとか言ってた」 「判定とかあんの?」 「ごめん、私が馬鹿だったわ」 は手に持っている単語帳に目をやった。 まったくと言っていいほど俺は受験がどんなものかわからなかった。俺の高校受験のようにちゃっかり受かったりするもんなんだと思っていた。だけどの様子を見ていると、それは違うらしいことはなんとなくわかった。 「銀時はどうするの?」 「聞いて驚け!」 「嫌」 うぜぇ・・・。 「まぁ、ともかく聞け。高杉の親父さんの会社の系列のところで雇ってもらえることになったんだよ」 「コネってやつね」 「そうだね」 電車に揺られる。この制服を着て乗るのはもうあと1回か。またその時は、違う景色が広がっているんだろう。 駅に着き、電車を降りる。思い出す。初めて一緒に帰った日のこと。あの日からだろうか。いつの日からだったのだろうか。それはわからない。ただ確実にどこかにはあったのだろう。を好きだという気持ちが。 どうしてかわからないんだ、俺にも。どうしてこんなにも諦めが悪いのか。好きでいたって報われることなどないはずなのに。 「じゃあね、銀時」 その時の俺はどうかしていた。生き急いでいた、そんな言葉が多少似合うだろうか。 俺はにキスをした。 アイツの腕を掴んで、自分に引き寄せて、俺はキスをした。 何も言わずに俺はそこから立ち去った。 あの瞬間。あのキスをしてしまう、いや、してしまった後に、俺の人生は終わっていればよかった。そしたら俺はそれなりにいい人生だったと、少し笑ってあの世にいった。 ------------------------------------ やっとここまで来ましたか。 もうしばらくお付き合いください。 |