過去と現在









なんだかんだで第一志望の高校に受かったのは良かった。だけど同じ中学で仲の良い人はみんな違う高校だった。少なからず、私はそれを望んでいた。ふとすべてが煩わしくなったのだ。人との関わりが嫌だった。
家族と仲はあまりよくなかった。家は自分だけ別の生き物かと思わされるような場所だった。
高校に入って学級委員なんて鬱陶しいモノをやった理由は、そこに意味を見いだしたかったから。居場所だと確信を持たすためだった。



、ガラス割れてたけど、なんでだ?」

「は?」



先生に突然呼ばれたと思ったらそんなことを言われた。



「は?じゃなくてだな、ちゃんとしろよ。学級委員なんだから」

「すいません・・・・でした」



なんで私が怒られなきゃいけない。なんで私が怒られなきゃいけない!!



「あ、ちょっと近藤くん」



クラスメートで見覚えのある姿に声をかけた。



「ん?告白なら24時間受け付けてるぜ☆☆」



バカな人だな。なんで私この人に聞いたんだ。もっと人を選ぶべきだったかな。まぁこの際、どうでもいいわ。



「そんなんじゃなくて、クラスのガラス割ったの誰か知らない?」

「ああ、あれか。あれなら総悟だ」

「総悟?」



誰だ?知らないや。



「沖田総悟。窓側の席の前から3番目に座ってる」



私は教室に戻り、言われた席をみた。光に透ける薄い色した髪が風になびく。ああ、なんか・・・・・憎たらしい感じだ。
それが運命の始まりだった。





あ、なんか音がする。ああ、目覚ましの音だ。起きなきゃいけない・・・。
バタンと勢いよく手を目覚ましに置いて、のっそりと起き上がる。嫌な夢ばかりを見る最近。なぜだろう。何が私に夢を見せるのだろう。
今日の夢はあれだったな。思い出。総悟に出会った思い出。私は意外と記憶力がいいらしい。
洗面所の鏡で自分を見る。寝癖がつき放題で色んなところがハネている。なんだか直す気にもなれず、そのまま大学に行った。そしたら友達に笑われた。



「あっんたどうしたのよ」



腹を抱えて笑う。なんだ。別にいいじゃないか。



「いや、なんかどうでもよくなって・・・・」

「あんたさ、恋してんじゃないの?恋してる女はそんな風になんないわよ」



なんだその理論。



「じゃあ恋してないのよ」

「土方くん」



ニヤリと笑って私を見る。何が面白いんだか。



「土方くんは・・・・・よくわかんない」

「ほっ・・・」

「何その笑い」



キモいとは言わないでおこう。



「悩める乙女は良いわね」

「悩んで・・・・・んのかな・・・・・」



私は確かに迷ってる。でも何に?どこで?大切な部分がわからない。だから迷ったって、答えなんてでてくるワケがない。



「悩んでないの?」

「別に彼氏がほしいとは思ってない。望んでない。いらないと思ってるぐらいだから」

「高校の彼のせいで?」

「うん・・・。だから・・・・だから受け入れられない怖さとか、離れてしまう怖さがわかる」

「同情ね」

「・・・・・」



友達に言われた言葉を強く噛みしめた。私は何様のつもりなんだろう。同情なんてしてるつもりは無かった。だけど考えてみればそれは酷似していた。



「髪ぐらいちゃんとしろよ」



声がする。いや、気のせいだ。だって彼はいるはずがない。ん?だけどあの人がどこの大学通ってんのか知らない。



「あの・・・・えと・・・・・なんで?」

「1個しかない授業が休講になってヒマだから」



・・・・大した理由ですこと。



「じゃあ私はちょっと・・・・」



友達は一体どういうつもりで去っていったのか。私と土方くんに何を話せというのか。



「なんで来たの?別に話すこともないよ」

「髪、なんだそれは。ちゃんとしろよ」



なんでそんなことを言われなきゃいけないのかな。別にいいじゃないの。



「・・・・・いつも笑ってた」

「は?」



私、何話してんの?



「ハネた髪を見て、変だけど嫌いじゃないって言って私の髪を撫でた」



何を言ってるんだ。それがどうした。それはしまい込んだはずの思い出のはず。総悟の言った言葉。



「何言ってんだ?」

「・・・・ごめん」

「なんで謝る?」

「ごめん」

「お前なぁ・・・」

「ごめん」



私は最低だ。彼に彼を投影しようとしてる。忘れようとしているのに。彼を見ると総悟との思い出が溢れてくる。閉じ込めたモノが溢れてくる。



「俺は総悟じゃねぇ」

「ごめん・・・・なさい」



最低だ。何が忘れるだ。ウソばっかりだ。あの缶を開けなければよかった。あんな夢を見なければよかった。
すべてを捨てる勇気を持っていれば良かった。



「俺はどうしたらいい?」



彼が言う。



「俺はどうしたらお前に見てもらえんだ?俺はお前に俺を総悟としてみてほしいんじゃねぇ」



私は最低だ。
もうあなたを傷つけたくない。あなたをこれ以上振り回したくない。
ダメだ。私はダメだ。ダメ・・・・・なんだ。



「ひ・・・・土方くんの気持ちは・・・真っ直ぐで怖い。真っ直ぐだから・・・突き刺さる。だから私は逃げようとする。その場所が過去。・・・・・あのね、土方くん」

「なんだ?」



深く響く声。知ったときからずっと思ってた。



「きっと土方くんに似合う子がいるよ。私じゃない誰か」

?」

「たくさんの気持ちを・・・・・ありがとう」


逃げた。走って逃げた。逃げることしか私は知らないらしい。

前に進めない。前はどっちにあるのかわからない。過去はリアルにありすぎて、消えてくれない。消せないだけかな。私はダメだ。最低だ。
本当はわかってる。未練があること。土方くんを愛しいと思ったこと。
わからないフリを続ける。私はずっと、この先ずっと。
それはあなたを傷つけたくないからじゃない。
私が怖いだけ。
傷つくことが、怖いだけ。








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   誰かのためのウソも、結局は
   自分のためのウソになりかわる。