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ながれ
あれから何日が経っただろう。土方くんとはまったく会わない。前までの偶然が嘘のように。 これで良かったんだ。後悔など、微塵も無い。嘘・・・だけど。 「久しぶりィ」 電車に乗っていた時だった。座って本を読んでいたら、誰かが声をかけてきた。 「・・・・そっ・・総悟?」 「元気そうじゃねェですかィ」 「なっ・・・なっん・・・なに・・・」 「この前、家にトシが来やした」 「ト・・・・トシ?」 「土方十四郎」 「ああ・・・・」 私に何を言えというのか。 「降りやしょう」 グイッと私の腕を引っ張る。誰かと・・・似ているな。 「乗りなせェ」 駅を出てすぐの駐輪場。総悟が自転車にまたがり、私に言った。私の腕を掴む。逃げないようにだろうか。 「嫌」 「乗りなせェ」 「嫌」 「乗りなせェ」 「嫌だってば!!」 そう叫んだと思ったら、総悟が顔を近づけてきた。 「なっ何?」 顔が近い。 「キスされたくなければ乗りなせェ」 私は仕方なく後ろに乗った。 総悟はこんな人だったかな。 結局私の記憶も色褪せてる。 「掴まってなせェ」 なんだか捕まるのが嫌で私は後ろに座っただけだった。 「嫌」 そう言ったら、急にカーブを曲がった。私はバランスを崩して自転車から落ちた。 「ほら、掴まってないからでさァ」 わざとだ。絶対にわざとだ。くそう。 「俺の服は汚いって言いたいんですかィ?」 汚い雑巾を掴むように、服の裾をつまんだ。またカーブ。また落ちる。 「ちゃんと捕まってないからでさァ」 なんなんだ。くそう。仕方なくしっかりと掴んでやる。 ふと、横切る景色に目をやる。地元だ。人生の大半を過ごした場所。辛いことも楽しいことも知っている場所。始まりと終わりを知っている場所。 自転車が止まった。私は素早く降りた。そこは河川敷だった。 「よく、来たね。ここ」 「あぁ」 辛いこと、楽しいこと、色んなことを話した場所。 「変わらないね」 私たちとは違って。 「少しだけ話をしやしょう」 そういって総悟は座り込んだ。私は隣にそっと座った。 「俺はお前を傷つけた」 総悟は1人で何かを話しはじめた。 「トシが言ってやした。見たって」 勝手なことをしてくれたこと・・・。 「今さら何を言っても仕方ないだろうけど、言うから聞いといてくだせィ」 「聞くだけね」 スッと深呼吸をしてから総悟はまた、話を始めた。 「お前は頭が良くて、俺はそんなに良くない。それが少し後ろめたかった。変なプライドがあった。それで・・・結果が出て、俺はお前よりやっぱり頭が悪かった。そんなくだらない理由で、別れることにした」 「うん・・・」 そんなことを気にしていたのか。まぁ、男の人って気にするのかもしれないけどさ・・・・。 「お前が見たのは、お前の友達が俺を見つけて、なんでいんの?って聞かれた時だと思う。俺は・・・・俺の気持ちはずっと、お前に向いてる。ずっとずっと、後悔してて、引きずってて、どうにかしたいのにできなくて、その時にトシが来て、チャンスだと思った」 彼はこれから何を言うの?私の想像通りだとしたら、私はどうしたらいいの? 「好きだ。今でも。だから・・・」 総悟の言ってることは、誰が聞いても最低なことなんだろうな。都合のいいことなんだろうな。だけど、私はそれが、どこかで嬉しいよ。 「やり直そう、俺たち」 ねぇ、土方くん。 どうしてこの場面で現れないの? 現れてさ、ふざけんなって言って、総悟の横っ面一発ぐらい殴ってさ、それで私の腕を引いて走り出してよ。 でないと私、流されてしまうよ。 ------------------------------------ 理解は常に遠い場所にある。 |