迷い









ぐるぐると言葉が回る。総悟の言った言葉がずっとずっとぐるぐると頭の中を回っている。
私は普通に嬉しかったのだ。本当はあそこの場面で「本当?」だなんて乙女らしく聞きたかったのだ。
だけど私は「考えさせて」と言って、帰っていった。
「考えさせて」と言った時点で私は私を最低だと卑下した。だって、それは可能性があるってこと。総悟に期待を持たせる。
なんで「そんな都合のいい事言わないで」って言えなかったんだろう。

やっぱり私、前に進めてないのかな。



家の前にはまた、見慣れた景色があった。



「電話すればいいじゃない。いるかどうか」



土方くんが玄関の前にしゃがんでいた。その姿勢のまま、私を見上げた。



「電話したけど出なかったのは誰だ?」



私は携帯を取り出した。電話が光っていた。着信ありとなって、10件ほど。すべて土方くんからだ。




「こんなことばっかやってたら、俺いつか警察に突き出されるわ」

「そうだね・・・」



私が玄関の扉を開けるために扉に近づくと土方くんは立ち上がった。



「・・・なんかあったのか?」

「え?・・・・別に」



扉を開けて中に入る。続けて土方くんも入ってくる。
土方くんは慣れたように絨毯の上に座り込んだ。

私はガタガタと荷物を置いたり、手を洗ったり、わざわざお茶の用意までした。



「どうぞ」


土方くんにお茶を出す。「ありがとう」と小さく彼は言った。



「何があったんだ?」



お茶を飲みながら土方くんが言った。



「だから、何も・・・ないよ」

「お前さ、俺になんて言ったか覚えてないのか?「きっと土方くんに似合う子がいるよ。私じゃない誰か」って言って、それからしばらくしてこうして会いにきたら、いつものお前なら「なんで」だとか、「やめて」だとか言うだろ。なのになんで、なんも言わねぇの?」



あぁ、すごい。この人、本当に私を見ていてくれてるんだ。見てくれてるからわかってくれてる。
私なんて総悟のことですぐに頭がいっぱいになって、土方くんの気持ちなんか忘れてた。言った言葉も忘れてた。



「ごめ・・・ごめんなさい・・・・」

「謝んなって。なんかあったのか?」



私・・・私この人を好きになりたい。好きになりたいの。だけど私の中にいるのは総悟で、土方くんじゃない。
どうして。どうして。何がそうするの?



「どうした?」



あなたの優しさが
あの人の優しさが
私を苦しめる。


「ありがとう」と言いたいのに、なんで言えないのかな。


私は静かに涙を落とした。
土方くんは何も言わずに黙って私を見ていた。







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   なんだか予想より長くなってます。
   そろそろラストに向けて走らなければ・・・。