ただ まっすぐ あなたに





ただ まっすぐ あなたに









何もかもを疑った。目も耳もみんなみんな疑った。それぐらい私には信じられないことだった。



「なっ・・・なん・・・」



多分彼は店から出てきた。いた?気づかなかった?
頭が正常に動いていない。



「送ってやろうかって言ってんだよ」

「なんで・・・いるの?」

「友達と飯食いに来たら合コンやってる奴らいて鬱陶しいなぁって思ったらお前がいた」



私は土方くんの顔を見た。
胸が締め付けられる。
土方くんだ。土方くんがいる。嬉しいはずなのにどこかツラい。



「歩こうぜ。店の前で立ち話もあれだからな」



土方くんはスタスタと歩き出した。私はそれに着いて行った。少し距離をあけて。



「楽しそうだったな。総悟はそういうことなんも言わないのか?」



前を向いたまま話す。
ああ、そうか。この人私が総悟とより戻したと思ってるんだ。



「総悟とは・・・友達だよ」

「・・・・はぁ?」

「私と総悟はちゃんと別れてなかったからずっと引きずってたってことを、お互いわかって・・・だから・・・友達になった」

「・・・あっそ」



土方くんは私の前を歩いている。振り返らないからどんな顔をしているのかわからない。



「さっき楽しそうにしてたじゃねぇか。良い人みつかって良かったな」

「あの人は高校の同級生。総悟の友達。高校の話で盛り上がってさ、ずっとしゃべってた」

「人生なにが起こるかわからねぇからな」

「近藤くんには好きな人いるよ」



土方くんは何も言わなかった。何も言わない代わりに頭をかいた。それから大きなため息をついた。そして足を止めて振り返った。
私はビクリとした。
だけど土方くんの顔は下を向いていた。



「お前・・・・・・・・」

「はい・・・」

「・・・・んな・・・・ふざけんな・・・」

「え?」

「ふざけんなっつってんだよ!!」



土方くんは顔を上げて私を見て言った。私は迫力に負けた。



「ご・・・ごめんなさい・・・?」

「俺・・・・俺は・・・もうお前のことを・・諦めて・・・・だから・・・今日声かけたのだってもう総悟とより戻したこと聞いて、んでもうすっぱりお前のことなんか・・・・」



土方くんは私から目をそらした。そしてまた私に背を向けて歩き出した。



「だけど!!」



私はその背中に向かって叫んだ。土方くんの足は止まった。また振り返る。私は下を向いて話した。



「それなら・・・そんなこと言うなら・・・なんで退くんに私のこと聞くのよ!!」

「なっ・・・あいつ・・・・」

「私に言った退くんも悪いかも知れない。だけど・・・だけど私は・・・・嬉しかった」

・・・」

「嬉しかったのよ。本当に・・・」



なんで涙が出てくるの。どこからきたのかわからない。
嬉しいから?悲しいから?わからない。わからない。土方くんが愛しいこと以外。



「今だって・・・土方くんがいることが嬉しいよ」



下を向いたままの私に近寄ってくる足音がする。視界に男の靴が入ってくる。



「お前、それはどういう意味だ」



言葉を発しようとしてもなせがつまって出ない。



「言えよ。わかんねぇよ」



すっと空気を口から吸う。そして吐き出すと同時に口を動かす。



「好きです。多分・・・」

「顔上げろ」



そう言われてゆっくりと顔をあげる。すぐ前に土方くんの顔があって、唇を重ねられた。
なんの抵抗もしなかった。むしろ唇をゆっくりと離して土方くんを引き寄せたいと思った。

ただ見つめ合っていた。そして土方くんが言った。



「ふざけんな」

「・・・え?」



今キスしたのはどこの誰よ。



「俺はもうお前のことなんか・・・」



また沈黙が押し寄せる。そしてまた破るのは土方くん。



「女は面倒くさい」



回れ右をして歩き出す。私はそれに着いていく。今度は横に並んで。



「女は面倒くさいんだよ」

「じゃあ今までの土方くんの私に対する行いはなに?女なんて面倒くさいんでしょ?」



チラリと土方くんが私を見たのに私は気づいた。



「俺もよくわかんねぇよ。最初は酒に酔ってほっとけなかっただけだと思ってた。だけどお前をもっと知りたいだとか、なんかそんなことを考えた。んで気づいた。初めて本気で女を好きになったって。お前は面倒くさくない」

「なんか私が女じゃないみたい」

「そんなこと言ってねぇだろ」



彼はポケットからタバコを取り出して火を付けた。
時々土方くんからタバコのニオイがした。だけど吸ってるところを見るのは初めてだ。なんとなく色っぽい手がキレイだった。



「タバコ吸うんだね」

「お前がタバコ嫌いだったら嫌だから、お前の前では吸わなかった」



健気な人。



「なんで私なの?」

「知るか。あれだ・・・・好みだったから」

「好み・・・?」

「あ?あぁ。顔とか雰囲気とか・・・・なんかもう・・・・全部」



照れもしないで彼は言った。私がなんだか恥ずかしくなってくるぐらいだ。



「へぇ〜・・・」



この人は時々本当に予想もしないことを言う。だからいつも土方くんのペースになってしまう。だけど嫌じゃない。そう思う。



「へぇ〜って、散々言わしといてそれかよ」

「だけどもう私のことなんかどうでもいいんでしょ?」



土方くんはあからさまに大きなため息をついた。



「女は面倒くさいって言った男がどうでもいい女にキスすると思ってんのか」

「だって私は土方くんに愛想尽かされてもおかしくないことばっかりしてきたから・・・」

「そうだな」



土方くんは何も言わない。大切なことを言ってくれない。



「結局土方くんは今でも私のこと好きなの?」



こんなことを聞くのは恥ずかしい。だけど知りたい。



「お前理解力ないのか?ったく・・・。好きだよ。ハッキリ言って今、すげぇ嬉しいんだよ」



暗くてわかりにくかったけど多分土方くんは照れていた。なんだか私は嬉しくて笑っていた。



「笑ってんじゃねぇよ。散々人が・・・色々やってここまでこじつけたってのに」

「うん、ありがとう。私をみててくれて」

「どういたしまして。これからもお前を・・・をみててやるから」



そう言って土方くんは私の手を握った。

「人生何が起こるかわからないからな」

さっき土方くんの言った言葉を思い出す。
本当にそうだな。出会った頃は今みたいになるなんて思ってなかった。

これからは土方くんだけをみていくから。

私の気持ちは、ただ まっすぐ あなたに。







あとがき




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   やっと終わりました。
   本当に最後までありがとうございました。