日曜日、俺はなんとも言えない気持ちだった。

何考えてんだ。練習とはいえ、試合なんだ。集中しろ。


「志波、さっき女の子がお前を探してたぞ」


「え?」


「水飲み場ら辺に行ったら、グランドどこですか?って聞かれてさ。
案内してるときに、なんで来たの?って聞いたら、お前を見に来たって。ほら、あすこに居る子」


フェンスの向こう側。そこにいたのは間違いなくだった。
俺が見たのに気づくと、笑って手を振った。俺はそこへ向かった。


「どうしたんだ?」


「見に来ちゃった。・・・邪魔・・・だった?」


「そんなことない」


は嬉しそうに笑った。


「志波くんが忙しいなら、暇な私が行けば会えるなって思って。
私が会いに行けばいいんだって思って。デートじゃなくても、会えたら嬉しいから」


恥ずかしくないのか。そんなこと言って・・・。嬉しいんだけど・・・な・・・。


「あ、志波くん照れてる」


「照れてない」


「志波、集合だ」


先輩の声がした。


「はい。じゃあまた。あとでな」


「頑張ってね」


「ああ」


良かった、会えて。試合、頑張ろう。




試合は5-3で負けた。やっぱり上がいるんだと痛感した。
片づけを早く済まし、俺はの所に行った。


「お疲れさま。惜しかったね」


「まだまだ、練習が足りないな。しっかりやらないとな」


と話しているのは、こうやって顔を見ながら話せるのは嬉しいはずなのに、
なんだかよくわからない気持ちが邪魔をしていた。


「どうする?」


「どうしよっか・・・。志波くん、疲れてるでしょ?
 明日も練習あるし・・・。今日は、ゆっくり休んで下さい」


「じゃあ、送る。家まで」


「私の家、遠いよ?」


「・・・いいんだ。少しでも長く、一緒にいたいから」


は恥ずかしそうに笑った。


「その言葉が聞けたから、それでいいよ。志波くんは家に帰って、休んで」


「・・・・・・・・・」


「・・・・じゃあ・・・送ってもらおう・・・かな」


「行くか」


 差し出した手に、の手が触れる。


「荷物、重たくない?」


「大丈夫だ」


「少しなら持つよ?」


「お前に持てるかよ」


「何言ってるの。高校のとき、ずっと持ってたから持てるよ」


そういうと、俺の荷物を一つ、取った。


「あ、お前・・・何して・・」


「一人で頑張らなくていいからね」


その言葉の意味を、俺はしっかりと理解していなかった。
そのままの意味でしかとっていなかった。その場のことだけなんだと、思っていた。

駅に着くと、が言った。


「ここでいいよ。電車代もったいないし」


「痴漢にあったらどうするんだ」


「大丈夫だよ。・・・やさしいね、志波くん」


はまた、嬉しそうにニッコリと笑った。


「今日、会いに来て良かった」


「・・・俺も、会いに来てくれて・・・・その・・・あの・・・ん・・・」


クスクスとが笑っていた。言葉は口に出すと恥ずかしいんだ。


「じゃあ、またね」


「気をつけて帰れよ」


「はい」


手を振って、また会おうと言って、俺たちは別れた。





家に帰ったとき、なんだかもやもやしたものがあった。

そしてそれは、しっかりとした形を作り出した。

俺はに無理をさせているんじゃないのか?いつも俺の都合で、振り回してないか?
仕方がない。本当にそうなのか?仕方がないのか?俺がどうにかすることは、出来ないのか?
考えれば考えるほど深みにはまっていく。そして、その深みは、底を知らなかった。






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